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2023/03/01

教養と財産が旅のキモ?

この仕事を始めた時の苦労話は至る所で話しているのでもう十分と思われているかもしれません。そんな中でも私自身とても苦しかったのが「アートのことを何も知らない」と悟った時でした。その時まではアートを選ぶのもお客様にお勧めするのも「好き」という気持ちが一番と信じ込んでいました。けれどアート関係者と話していて実にあっけらかんと「それって誰ですか?」などと聞いている自分に後になって顔から火が出る思いを繰り返しているうちにハタと気づいたのです。「好きなだけで仕事にしちゃだめなんだ」と。何年も厳しい建築業界に身を置いてきてそんなこともわからなかったとは自分の厚顔無恥ぶりに再度顔から火が出る思いですが、きちんと考えて行動していたらそもそもアートの仕事を始めるなどと思わなかったかもしれません。ぜったい自分には無理とあきらめていたことでしょう。厚顔無恥万歳です(笑)。

そう気づいてからの私はとにかく本を読み、美術史のことも浅くではありますが勉強し、常になにか詰め込めることがあれば詰め込もうとアート脳を養うのに躍起になった日々を過ごしていました。中でも時間とお金を使ったのは海外アート旅です。アートフェアや海外のギャラリーを巡って、よくわからなくても一流のアートを見ることが一番勉強になるのではと考えたからです。当然メガギャラリーで出会う作品と自分の間に関係がある訳ではありません。ただ、ひたすら良いものを見ておけばこの先たとえ若い作家の作品を見た時も自分なりの指針ができて判断できるのではと考えたのです。そしてもう一つ、作品をお客様のために選びお勧めする際にもいろんな素晴らしいアートを眼にしている人だと安心してもらえるのではないかとも思ったからでした。

そんな訳で今思えば無理をしてほうぼう出かけたものです。でもそのアート旅の違った側面に気づいたのはなんとコロナ明けに出かけた先日の旅行の時でした。それに気づかずずっと旅行してたなんて自分でもちょっと笑ってしまいます。それはアート旅を繰り返し、多くの方の話を聴いたり資料を読んだりしているうちに自分の中に貯金してきた”教養”の2文字。いろんなことが頭に詰まっていると美術館に行ってもギャラリーに行っても本当に楽しいんです。”教養”と聞くとちょっと偉そうに聞こえるし、私にはほど遠いイメージの言葉でもあると自覚しています。でも”教養”ってあとから自分の努力次第でなんとでもなるもの。さらに辞書を紐解くと「学問・知識を(一定の文化理想のもとに)しっかりと身につけることによって養われる、心の豊かさ」とあります。私の場合アートを仕事にしてしまったのでかなり無理をしていろんな知識を詰め込んだけれど、幸いにもとても好きで興味のあることだったためすんなり”教養”として私の細胞に溶け込ん込み、心の豊かさとして自分の中に存在してくれているようです。「教養があると遊べる」とはタモリ氏の名言ですが初めて聴いた時になるほどと膝を打つ思いでした。今ではその言葉は自分の経験からも裏づけされている気がするのです。

そしてもう一つ。アートを旅に絡めると国内外問わず旅の記憶がより鮮明になり記憶にとどまる気がします。今回の旅行でも至る場所でかつてのアート旅を思い出し、それがいつだったのか厳密にいうとどの美術館だったかも忘れているのに、その時の空気や湿度、天候みたいなものが体感として蘇るような不思議な経験をしました。そういったかつての多くの作品との対峙も私にとっては知らず知らずのうちに形のない財産として心に残っていたのです。”教養”と”アート鑑賞が培ってくれた心の財産”が私の旅をファーストクラスで渡航し最高級ホテルに滞在するのと同じレベルにラグジュアリーなものへと導いてくれました。そしてそれに今回ようやく気が付くことができたなんでいったい何年かかったんでしょう(笑)?


たまたま私にとっては旅行×現代アートが旅行という非現実的かつ逃避といった時間をより色濃いものにしてくれますが、人によってはオペラかもしれないしクラシックコンサートかもしれません。けれどそこでグルメ旅とかになるとまた違ったものになる気がします。もちろん美味しいものを食べ歩く旅もたいそう魅力的だし楽しいと思います。ただそこに至るまでに自分の中に”教養”とすべく自分から働きかけて勉強してきたものを追いかける旅はある種”答え合わせ”的な感覚を伴っているためより深い楽しみが潜んでいる感じがあるのではないでしょうか?(もちろん食のプロの方は別として)

さて今月パリで見たアートの話と旅のファッションについて話すイベントを急遽開催することになりました。私のようなものの話で教養を高めていただこうなどと微塵も考えておりませんが、話す言葉の断片にご自身でしっかり肉付けしていただいて是非次回のご旅行に役立ててくださればいいなあなどと思います。私がアートを知ることによって海外での美術館巡りがぐ~んと楽しくなった感覚をお節介なようですが皆さんにも味わってほしいのです。ご興味ございましたらぜひ遊びにいらしてくださいね!

31日・1日両日とも満席となりました
お申込みありがとうございました。
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