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2021/03/28

黒と白のオナハシ

*「こぉと」計画中に感じたことを様々な切り口のオハナシで綴っていきたいと思います*

今回のインテリア・コーディネートで一番困ったのは床材。ある程度の古さを残す和空間に床だけ真っ新な板がくるというのはどうにもいただけない。それはどんな材を以てしてもでした。じゃあ、畳?いっそのことタイル?いろんなことを思い浮かべては都度消去し、その繰り返し。

そんな中突然浮かんだのはハタノワタル氏の和紙でした。確か氏のIG投稿で床の施工の話が出ていたはずと、早速建築家長坂さんに伝え、しばらくしてハタノ氏のアトリエを一緒に訪ね話を聞くこととなりました。床壁天井、全てに和紙を使った素晴らしい空間で話をするうちに、益々床に和紙を張りたいという想いが強くなり、施工を正式にお願いすることになったのです。

さて現場での和紙の施工はこんな感じ。壁だと使われる和紙は1枚張りですが、床は2枚張り。そこに柿渋を塗って乾かし、塗装し、最後にガラスコーティング。ここで皆さん「?」と思われるかもしれません。実は私自身も最初に話を聞いた時「?」となったのです。それは「色は現場で塗装するんだ」ということ。てっきりすでに染められた和紙を張っていくものと思い込んでいたからです。現場合わせと聞いて少し安心したものの、実はそちらの方が大変だと後から気づきました。サンプルのようなものが手元にあれば時間をかけてカラースキムに臨めます。しかし現場合わせとなるとよほど強いイメージを持っていなければ短時間のうちに決めるのは難しい。工事工程表のハタノさん施工日程をにらみながら、色決めには慣れっこのはずの私ですが少しプレッシャーを感じてきました。

私のイメージしていたのはアートを反映したとてもシンプルなもの。けれどそれらは自分が手に入れることは不可能で美術館で見ることしか叶わぬアートです。和風の趣を残した空間はできるだけ暗く、照明も最小限の照度に、障子から差し込む光が黒に近いグレーの床を仄かに照らす中、塗り壁には村上友晴氏の作品を。メインの部屋はそこから一転し、柔らかくほんわりとけれど潔い白の空間に仕上げたいわば和風のホワイトキューブ。そして壁にはロバート・ライマン氏の作品を。そんな風にただただ憧れでしかない作品を念頭に置き”黒の空間”から建具を開けた時に現れる”白の空間”といったドラマティックな演出を思い描いていました。さらにこの場合の黒は真っ黒ではなく墨色であること、白も真っ白ではなく暖かな白でなくてはいけません。その微妙な黒と白をハタノさんなら実現してくれると確信していたのです。

けれど最後の段階で長坂・ハタノ両氏と意見が分かれました。私は強く白と黒の世界観にこだわり、お2人はくすんだ白一色で全て統一してはとの意見。これはどちらが間違いという訳ではなくどちらも正解なのだと思います。けれど私はどうしても持たざるアートに導かれたカラースキムを信じたかったのです。

完成した黒と白の色味は完璧で、理想通りの黒の空間と白の空間へと繋がりを作ることができました。ほぼ完成し何度もその場を行き来しながらも今だにほんの少しばかりの高揚感を覚えるほどに私は黒×白の空間を気に入っています。

これからはこの空間でリアルに私のコレクションしている作品やお客様にご紹介したい作品を並べていかねばなりません。

今度は黒と白の画用紙に様々な色の絵具を乗せていくように。



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