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2019/02/05

一番好きなアーティストって???

本の撮影も無事終了してほっと一安心、、、したのも束の間。本づくりが本格的に始まりなんだか考えることがいっぱいです。昨年からずっとどういう内容でいこうかとエディターの加藤さんとやり取りをしているのですが、ここへ来て私の大好きな作家とは?影響を受けた作家とは?と改めて考えることが多くなりました。

美術館で観る作家という範囲で脈絡なく上げていくと物故作家ならモランディ、二コラ・ド・スタール、サイ・トゥンブリー、ロスコ―、ブランクーシ、フェリックス・ゴンザレス・トレスなどなど。存命というか活躍中の作家だとロバート・ライマン、ミヒャエル・ボレマンス、村上友晴、ヤン・ヴォ―、、う~んいったい何人いるんだろう?

私の場合特に誰が一番好きでなんらかの影響を受けたかってなると”みんな”っていうしかありません。偉大なアーティストたちの作品を観ることでアートに魅せられ結局アート業界の最末端に身を置くことになった訳ですから。それに私は自身作家ではないので直接的に影響を受けることはないし、受けたからどういう変化が自分に起きるのか考えてみたこともないのです。

ただそんなことをつらつら考えているとふと昔の記憶が蘇ってきました。上にずらっと挙げた物故作家の中で特に好きなのがド・スタール。大昔同じくド・スタール好きの先輩コーディネーターから新聞の切り抜きのコピーをもらいました。それは藤原新也氏がド・スタールを軸としたある男性との想いで話を綴ったものでした。ド・スタール好きにとってはすさまじく心に迫ってくる内容でそのコピーを長く大切にしていたのですが、2度の引っ越しで紛失してしまいました。

いろいろ検索したところ、そのエッセイは短編小説として形を変え「夏のかたみ」としてこの短編集におさめられていることが最近わかりました。早速読んだのだけれどド・スタール作品の持つ寂寥感といったものが文章から強く伝わってきます。

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自死を選んだド・スタール、そしてエッセイの中で出てくるド・スタール好きの男性も自死の結末を迎えたこと。その場所の景色がまさにド・スタールの絵に出てくるような光景であったこと。エッセイの中では確か「完璧な死」と表現されていたような。(その辺り記憶が曖昧でごめんなさい)私の中ではド・スタール作品とこのエッセイは同時に頭に浮かんでくるくらい印象的な話です。

有名アーティストのドラマティックな人生や破天荒な生き方、それを取り巻く人々の話なんかをほほ~と読むことはあるけれど、市井の人とアーティストの人生が交錯する話でこれほどまで感動したことはありませんでした。これこそアーティストとの運命的な出会いなんじゃないだろうかと。。。

そんなド・スタール作品がフィリップス・コレクション展で2点展示されています。(2月11日迄)ご興味のある方、本と一緒に是非に!