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2018/04/22

「かみ添」の仕事展ー聴竹居に唐紙をそえる

近年「日本人の理想の住宅」として注目され2017年に重要文化財指定された木造モダニズム建築「聴竹居」 建築家藤井厚二氏の5邸目(!!!)の自邸だった建物です。ここを舞台に「かみ添」主宰の嘉戸浩氏が唐紙を添えるというなんとも贅沢な展覧会に出かけてきました。(しかも会期は2日だけ!)

あ~この感動をどう伝えたらよいのでしょう?中の撮影はNGだったので外観だけご紹介させてくださいね。

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とても良い天気に恵まれ緑も鮮やか。さわさわという心地良い音や鳥のさえずりも聞こえ日が暮れるまでずっとこの庭で過ごしたくなるようなそんな1日でした。

内部は間取りはもちろんのこと、ディテールやちょっとしたしつらい、使われている素材、オリジナルデザインの家具(この復刻版制作してほしい!)すべてが妥協なく完璧にデザインされています。そんな空間に嘉戸氏の唐紙が良い意味で主張し過ぎず、藤井氏の空間デザインのコンセプトに寄り添い、90年前この住宅が建てられた時から存在するかのように、そうまさに”そえる”といった表現がぴったりに展示されていました。その展示は絶妙の一言!

私は唐紙の持つ風合いや意匠性といったものにとてつもなく惹かれます。今まで氏が手がけられた唐紙も展示されており手にとって目にすることができました。どの柄も色合いも自然に笑みがこぼれてくるほど美しく心に響きます。

見学の間嘉戸氏にいろんな質問をしたり、保存活動をなさっている方々から住居についていろいろ教えていただいたりと、本当に充実の1時間でした。先日東京で訪れたファーガス・マカフリーギャラリーでのロバート・ライマン展に続き、空間と作品の関係性、さらには日本が持つ伝統的な美意識といったものを改めて認識することができた素晴らしいひと時でした。

さてワタクシ、不勉強で藤井氏の経歴といったものを存じておりませんでした💦ちょっと調べてみたのですが、福山の造り酒屋に生まれ小さな時から良いものを見て育ったんだそうです。う~ん納得!住居にただよう美意識は生まれた時から培われたものなのですね。しかもこちら5件目ですよ!5件!!よく「3回建てなければ理想の家に近づかない」とは聞きますがそれを越えていますものね。でもこれはなにも贅沢するために家を5件も建てちゃったという訳ではないようです。(とはいえ大山崎に12000坪の土地をば~んと購入して作っては壊しまた立ててを繰り返してってもうすご過ぎるけど)

疑洋風建築がもてはやされる時代に「日本の気候風土に適合した住宅とはどのような住宅か」「日本の自然素材をこれからの住宅にいかに取り入れるか」そんなことをコンセプトにいわば実験住宅として自宅を建て続けたのだとか。この「聴竹居」はいわば集大成という訳なんですね。全館空調の先駆け(しかも電気を使わずに自然に)ともいえる手法を取り入れたり。当時は極めて斬新であっただろうキッチン内部の工夫など、もうすべてがお見事としかいえません!

素晴らしい建築と今を生きる素晴らしいクリエーターの仕事を同時に味わうことができた至福の時間でした。




2018/01/14

村上友晴展~ART OFFICE OZASA(京都)

2018年がスタートし2週間が過ぎました。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
厳しい寒さが続いていましたが、今週からは少し暖かくなるとのことでほっとしています。

先月に義母が急逝し、皆さんには年始のご挨拶もできずにいました。義母はまだ女医という仕事自体が珍しかった時代に外科医として生きることを選び、真っすぐに自らの道を進んだ心優しき熱血漢でした。私にとっては愛する家族であると同時に一人の女性としてレスペクタブルな存在だった義母。そんな彼女をお手本に自分の人生を余すことなく生き抜こうと思った年明けでした。

さて今年初めて訪れた展覧会は村上友晴展。そんな心持ちに相応しく背筋がピンと伸び、厳粛な気持ちで臨みたくなるような展覧会でした。何年か前に名古屋で桑山忠明氏との大きなグループ展があったのでご覧になられた方もおられるかもしれませんが、なかなか鑑賞する機会のない作家なのでよほどのアートファンでない限り、氏の名前にピンとくる方はおられないかもしれません。

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作品を最初に観た時、鑑賞というより祈りを捧げる行為が相応しい気持ちになったことをよく覚えています。後から氏が敬虔なカトリック信者であり、その制作スタイルも修道院の生活に倣ったものであることを知りました。深夜に起床し日の出まで制作、協会に行き朝の祈りの後食事。昼寝をした後夜の祈りまでまた制作、、、そのような日々を送り生み出される作品を前にすると厳粛な気持ちになるのも至極当然のような気がします。

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当初は長谷川等伯の作品に惹かれ水墨画を学ぼうと日本画を専攻しておられたのだとか。けれど岩絵の具をの表現方法に馴染めず、アメリカ氏抽象主義の画家たちの作品に衝撃を受け、今のようなスタイルに転換したそうです。真っ黒に塗られたキャンバスに木炭の粉末を混ぜて油分を減らした油絵具を塗る込めていきながら数年かけて制作される作品。そんな作品を前にすると言葉にならない思いが心の中に静かに湧き上がってきます。

皆様、是非に。(会期2月10日まで)







2017/06/11

大人のアート遠足

私を通じて”アートのある生活”を始めた皆さんを対象に時折開催している「大人のアート遠足」 昨日は国立国際美術館で開催中の「ライアン・ガンダー」-この翼は飛ぶためのものではない展 の鑑賞でした。

まずはランチタイム。皆さんの近況をお聴きしたり、私の”滑らない話”を披露したりとワイワイと盛り上がった後、この展覧会の見どころをサクッと説明しました。

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事前に下見を済ませ図録も読み込んでいたので説明もバッチリ!(←ホントなのか?)皆さんの展覧会へのワクワクも高まります~!ランチ終わりには参加者の皆さんとパチリ。

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その後の鑑賞タイム、皆さんと~っても楽しまれたようです。ライアン・ガンダー氏ははいわゆる”コンセプチュアルアート”のアーティスト。”コンセプチュアルアート”と聞くとやはり身構えてしまう方が多いのですが、ほんのちょっぴりの情報さえあればすんなり体に馴染むというか、頭に入ってくるというか、そんなに難しいものではないんです。まずは真っ白な気持ちで先入観なくアートを鑑賞するというスタイルももちろん大切ですが、ことコンセプチュアルアートに関しては少しだけ予備知識を持って鑑賞なさった方がいいのではというのが私の持論です。そして作家のインタビュー映像なんかが館内に流れているとしたらじっくりご覧になってくださいね。より近く作品を感じることができますから。ご参加の皆さんも口々に「奥村さんから聞いてたからものすごく楽しめた~」と言ってくださいました。やはり大人女性には現代アート鑑賞が必要ですね、だって鑑賞しているマダム達キラキラしてましたもん。

さらに現代アートは普段使っていない脳のどこかをいい感じで刺激してくれます。まさに”脳内ツボ押し”!(ええこと言うわ~ワタシ)キラキラオーラも纏えて脳もほぐしてくれる、こんなエステどこにもない!(笑) 

”衣食住アートを大切に”とIGではいろんな投稿をしていますが、やはり私が伝えたいのは”アートと暮らす喜び” 今回のように予備知識なしではちょっぴり難解に思える現代アートもすでにアートをお持ちの方にとってはアートベースができているので敷居高い感ゼロなんです。東京から参加してくれたアートビギナーHさんもそんなお一人。すっごく楽しまれたみたいで「奥村さんがアートを買った方がいいといいう意味が本当によくわかった」と言ってくれました。

奥村アート塾生にとっては現代アートは”必須科目”(笑) そこから美味しいもの、旅の話、ファッションの話が膨らんでいくのです。なのでものすごくトークの内容も濃ゆ~~くなります。しかも初対面の方同志もアートをキーワードにすぐに打ち解け「○○作品を買ったあの方」と話すと速攻「○○作品いいよね~大好き~」と返ってくるという距離感これまたゼロという素晴らしさ。だからといって決してアートオタクではなく、衣食住すべて大切にしているマダム達だからいい感じに毎日の生活の中でごく普通に現代アートが存在してるって感じなんです。

さて昨日の鑑賞ハイライトはビデオ鑑賞コーナーに鎮座していたライアン・ガンダー氏考案の架空キャラクター”アラタくんが”突然台車で運び出される風景に遭遇したこと。

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その後、会場内で”アラタくん”を発見した参加マダム達大興奮でありました!

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昨日は土曜ということもあり現代アートの展覧会としては観客がとても多かったのですが、これは館内撮影OKの影響も大きいのではないでしょうか?SNSで皆がどんどん投稿して話題性が増し多くの方が訪れるのはとても良いことだと思います。ただ一方で写真を撮ることに夢中になって作品に近づきすぎている方が多く見受けられ、私の方がハラハラすることもしばしば。その辺りとても難しいですね。それもアートを買う、美術館に頻繁に通う、そんな生活を送る方たちがもっと多くなればより鑑賞マナーも向上するのかもしれません。私自身撮影の際に結界を越えそうになることもあるので注意しなければなりません💦

こちらの展覧会7月2日迄。お子さんと一緒でも楽しめますよ~!


2017/01/10

アートを選ぶ感性って!?

ここ最近納品の様子もIGに上げていっているのですが、やはりそれにまつわるストーリーというものはそこでは全部伝えられないのでブログでもご紹介させてくださいね。

先月の作品お嫁入りのストーリーは???完成したばかりのご自宅にアートを購入してくださった素敵なファミリーのお話です。

こちらのお客様はIC仲間からご紹介いただきました。なんでも打ち合わせの初期の頃からアートのお話が出ていたそうなんです。なんて素晴らしい!ちょうどタイミング良く秋のセレクション展に足を運んでいただけて横溝美由紀氏の作品と岩名泰岳氏の作品をお決めいただきました。

横溝作品はイベント時大人気でいろんなお客様のところに嫁いでいきました。こちらで設置したのは玄関からリビングに入って正面の壁、そしてダイニングとリビングを繋ぐ場所。1階から見える様子もばっちりだったのですが、2階のファミリールームから見下ろすと「!!!」そこから見える作品も素敵ではありませんか!?

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10年以上様々なお住まいにアートを設置してきましたが、予想していなかった作品の効果的な見え方みたいなものにハッとさせられることもしばしばです。

ここで情報!その横溝氏のグループ展が損保ジャパン日本興亜美術館で今週末14日から2月9日迄開催されます。5人の実力派女性作家たちの作品が一堂に会するこの展覧会必見ですので是非に!

さてこちらに嫁いだもう一点はなんと中学生のお嬢様が選ばれたんです!以前もそんなことがありましたね~中学生のお嬢様がミヒャエル・テンゲス作品に一目惚れしてしまったというストーリーが、、、

私はこれこそがアートを選ぶ感性の在りようだと思うのです。大人、特に男性は「わからない。」で現代アートを片付けてしまいがち。そう言ってしまうと話はそこでおしまい。そんなわからないものを押し付けた方がいささか居心地の悪い結果に終わってしまう状況に私は何度出くわしたことでしょう。その一方「わからないのですが、、、」と切り出される方は男性、女性問わず感性豊かな方。わからなくても何かを感じ先を知りたいと思われる好奇心旺盛な方でもあります。

子供たち、そして思春期の少年少女たちはそんな大人の厄介な見栄なんか通り越して心で作品を感じ取ってくれる気がします。大人がそれを取り戻すというのは所詮無理な話ではありますが、できたら大人も柔らかな感性で作品を感じてほしいな~と思います。

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こちらの作品、本当は選ばれたお嬢様のお部屋に飾る予定でしたが、いろんな場所を検討した結果、ファミリールームに設置することになりました。天井が下がっていて、床に座ってくつろぐスペースのため作品の位置もかなり下げています。そしてご主人様が選ばれたアクセントクロスとこちらも予想外にマッチしてご家族と共に驚いてしまいました。

お年賀状にも「アートな生活ワクワクしています。」とのお言葉をいただき新年から感激でした。今年もそんなワクワクを多くの皆様にお届けできますよう。。。

2016/09/25

クリスチャン・ボルタンスキー「アニミタス_さざめく亡霊たち」~東京都庭園美術館

大好きな美術館の一つである東京都庭園美術館で始まったボルタンスキー展。これは2016間違いなく観るべきそして感じるべき展覧会です!

ボルタンスキーというアーティストの名前に聞き覚えが無い方でも”豊島にある心臓の音が聞こえてくる建物”と言えば聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか?ちょっと(かなり?)難解なイメージがあるボルタンスキー作品ですが、庭園美術館という空間に見事なまでに馴染み、一体化し、展覧会タイトルにあるように氏が作り出した亡霊たちがそのまま住み着いてしまったようにも思えます。インタビューの中で氏が「空間にコラージュする」といったようなことを話されていましたが、まさにその通りの印象なのです。

建物を入ると抑揚のない男女の会話がどこからともなく聞こえてきます。それらを耳にすると、この建物にかつて住んでいた人々の亡霊がそこかしこに現れているような気になり、脈絡のない一つ一つの会話に想像力を掻き立てられます。(これだけ聞くとちょっと怖い???大丈夫ですよ、、、笑)

建物2階には豊島の「心臓音のアーカイブ」から提供された「心臓音」そして幻想的なインスタレーション「影の劇場」が展示されています。土日は旧館部分での撮影はNGなので写真はありませんが、よしんばここで写真を紹介したとしてもまったく意味をなさないでしょう。なぜなら行ってそこで感じるしかないからです。

こちらは新館に展示されいた「眼差し」という作品の風景です。氏が取り上げるテーマは今まで一貫して「匿名の個人」「集団の生(生存)と死(消滅)」そして「記憶」 そこにはユダヤ系フランス人を父に持つ氏が、ホロコーストというおぞましく不幸な出来事に人生を蹂躙された人々に思いをはせているであろうことが強く感じられます。

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この作品の中央には金色のエマージェンシー・ブランケットが覆う大量の古着「帰郷」が鎮座していますが、古着もかつて存在したものとしての”不在”を表す暗示として使われているのです。

私はこの空間で全身に鳥肌が立ち涙があふれてきました。美し過ぎる展示に潜むその重すぎる意味、そしてそれらが放つメッセージを心が受け止める瞬間に私はどうしようもなく現代アートへの愛と畏怖と尊敬のようなものが自身の中に溢れてくる気がするのです。

さてこちらの映像作品。実は昨年ベネチアのアルセナーレ会場で観ていたのですが、その時は今回ほど心に迫ってはこなかったのです。(体力・気力の限界を迎えていたからか、、、)ところが今回は違いました。

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チリのアタカマ砂漠に設置された数百の日本製の風鈴が風に揺られチリンチリンと音を奏でるこの風景。なんとボルタンスキー氏が生まれた時の星の配置を描いています。作品タイトル「アニミタ」はスペイン語で交通事故などで亡くなった人々に手向けられた小さな祭壇を意味し、その意味は”小さな魂”なんだそう。会場全体には藁が敷きつけられており、あたかも鑑賞者はその場所に立っているような錯覚を覚えます。この作品の裏には今年完成したばかりのこちらも豊島の森にある「ささやきの森」の映像作品が展示されています。

氏のインタビュー映像もとても心に残るものでした。とにかく足を運んでみてください。。。

会期は12月25日迄。どうぞお見逃しなきよう。

*インスタグラムも是非覗いてみてくださいね!